伊藤匠(いとう・たくみ)/2002年10月10日生まれ。21歳。東京都世田谷区出身。宮田利男八段門下。20年、四段。21年、新人王戦優勝。21年度、勝率1位。23年、竜王戦挑戦で七段昇段(撮影/横関一浩)
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 31日、将棋のタイトル戦「叡王戦」第4局は大きな注目を集めた。藤井聡太八冠が1勝2敗とリードされ、負けたらタイトルを奪われる「カド番」に追い込まれていたから。藤井聡太八冠を追い込んだ伊藤匠七段とは? 過去の人気記事から振り返る。(「AERA dot.」2024年1月24日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)

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 AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。34人目は、伊藤匠七段です。AERA 2024年1月22日号に掲載したインタビューのテーマは「印象に残る対局」。

 2013年、小5だった伊藤匠は、宮田利男現八段に入門。棋士への道を歩み始めた。

「奨励会試験が大変だったことは覚えてます」

 当時、1次試験は4勝通過、3敗失格だった。

「1日目で1勝2敗。2日目も必敗の将棋を拾ったり。そこで受かったのはかなり大きかったと思います。奨励会に入る前がちょっと伸び悩んだ感じで。入ってからは意外と、それなりに順調に昇級していったという気がしますね」

 奨励会は関東と関西に分かれている。関東の伊藤は比較的速いペースで昇級、昇段を重ねていた。一方関西では同い年の藤井聡太が、史上最年少記録を更新しながら駆け上がっていた。

「向こうが(中1で)三段になったぐらいから、意識はしてたような気がします」

 2016年度前期の三段リーグ。中2で参加1期目の藤井は、17戦目、坂井信哉(伊藤の兄弟子)に敗れている。

「これで昇段はなくなった」

 伊藤はそう思った。しかし藤井の競争相手たちも敗れていた。藤井は最終18戦目で西山朋佳三段(現女流四冠)に勝ち史上最年少14歳2カ月での四段昇段を決めた。

「なんか、歯がゆい思いみたいなのはあった気がします」

 藤井新四段はデビュー以来負けなしで快進撃を続けた。伊藤は藤井の対局の記録係を務めながら、正直なところ、連勝が早く止まってほしいとも思っていた。しかし藤井は公式戦29連勝を達成。社会的なフィーバーが起こった。

 伊藤は中3の12月に三段昇段。翌年度開幕の三段リーグ参加まで少し時間ができたので、受験勉強をした。

「やっぱり高校ぐらいは行った方がいいのかなと思って」

 伊藤は難関校に合格した。

「『高校に行けなかったのか』って言われるのがシャクだから、受けただけっていう気がするんだよね、あいつは(笑)。まあ、それでもいいかと思ったんだけど」

 以上は師匠の見方だ。

「ははは、いやまあ確かに、そういうところはあったと思いますね(笑)。受けるならある程度、偏差値の高いところに行きたいというところはあったんですけど」

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