佐野辰夫(さの・たつお)/1964年、佐賀市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。93年から佐賀市議を2期務め、99年に佐賀市長選に立候補し落選。同年佐賀県議に当選。2007年、県議2期目の満了で政界を引退。現在、「赤字だけど、優しい妻の支えで」、地方政治の啓蒙活動中(撮影/本人提供)

「アメリカは日本にも徹底した地方自治を導入しようとしていた。でも中央集権を守りたい日本の官僚が書き換えた。これで日本では戦前と同じ、住民の代表である議会に権限がない地方自治になってしまった。押しつけ憲法なんて言いますが、地方自治については、もっときちんと押しつけてもらったほうがよかった」

 日本の膨大な借金も、地方政治が機能していないことが原因だと言う。

お金の使い方はまず住民に身近な市町村で決めるべきで、市町村ができないことは県、県ができないことを国がやればいい。それが逆で、国がカネを集め、方針を決めて補助金を出す。だから無駄な組織ができ、無駄なカネがかかり、膨大な借金ができてしまう」

 佐野さんは、地方自治体の局長や部長など幹部を地方議員から選ぶことを提案する。

「地方議員の不祥事が多いですが、たいした仕事をさせないから、たいしたことない議員が増える。責任ある仕事をさせれば、地方議会に優秀な人が集まります。疑うでしょうけど、やらないよりやったほうがはるかにいい」

 書籍化できなかった原稿を、佐野さんは自分で印刷して製本した。今はその本をテキストに、佐賀県内で数十人規模の学習会を開いている。

「日本を滅ぼさないためには、地方に主権を戻すことだけが、唯一、まっとうな解決方法だと信じています」

(編集委員・藤井達哉)

AERA 2024年6月3日号

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