チーム再建に向けては、長期的な視点での若手の育成とともに、新しい風を吹き込む外部補強も有効な手立てとなる。日本ハムのチーム作りを見ると、参考になる部分が多い。北山亘基、万波中正、田宮裕涼、水野達稀と生え抜きの若手が成長し、郡司裕也、田中正義、アリエル・マルティネスら移籍組も素質を開花させてチームの核になっている。
他球団で埋もれている実力者を移籍で獲得し、チームを再建する――。
その可能性を秘めた筆頭格がDeNAの大田泰示だ。今季は開幕からファーム暮らしが続き、1軍出場なし。外野はドラフト1位の度会隆輝が加入し、筒香嘉智が5年ぶりに復帰したことで層が厚くなり、さらに厳しい立場になっている。イースタンリーグで今季は24試合出場して打率.219、0本塁打と目立った成績を残せていないが、攻守で能力が高い選手であることは間違いない。ドラフト1位で入団した巨人では伸び悩んだが、日本ハムに移籍して4年連続2ケタ本塁打を放ち、中心選手になった。19年に打率.289、20本塁打、77打点をマーク。翌20年にはゴールデングラブ賞を初受賞している。33歳とまだまだ老け込む年ではない。環境を変えれば、もう一花咲かせる予感がする。
巨人の松原聖弥も俊足巧打の外野手で他球団の評価が高い。抜群の野球センスで知られ、21年に打率.274、12本塁打、15盗塁をマーク。だが、翌22年以降は1軍に定着できず伸び悩んでいる。今季は開幕1軍をつかんだが、9試合出場で打率.154、0本塁打。4月15日以降はファーム暮らしが続いている。巨人の外野陣は萩尾匡也、佐々木俊輔、秋広優人、浅野翔吾とレギュラーを狙う若手の成長株が多い。
巨人を取材する記者は「松原は自分の良さを見失った時期がありましたが、今年は足の速さを生かして逆方向に内野安打を放つなど出塁への高い意識が見えます。ファームでの今季打率は.220ですが以前の早打ちと違い、2ストライクと追い込まれても粘って四球で出塁する打席が多く、出塁率が.400と高い。外野の守備能力は球界トップクラスですし、1軍のスタメンで出続けたらある程度の結果は残すと思います」と評する。
パ・リーグ球団の編成担当が「環境を変えれば化けるかもしれない」と語るのが、広島の中村奨成だ。村上宗隆と同世代の24歳はかつて、球界を代表する捕手として将来を嘱望されていた。広陵高3年夏に甲子園で3試合連続アーチを放つなど4試合で6本塁打をマーク。85年に清原和博(PL学園)が樹立した1大会の個人最多本塁打記録を32年ぶりに更新。地元球団の広島にドラフト1位で入団したが、1軍に定着できない。7年目の今季は3試合の1軍出場にとどまっている。
前出の編成担当は「2軍では格の違いを見せているが、1軍では結果を気にするあまり打撃が小さくなっている印象がある。精神的な甘さがあるのかもしれない。広島を離れて出直した方が能力を発揮するのでは」と指摘する。