「生成AIにより『置き換え可能な仕事』はなくなる」(撮影/小山幸佑)

 すでに囲碁や将棋の世界では、AIがなぜこの手を指すのか人間には理解できないケースがあり、棋士が必死で研究している。

 茂木さんは2023年、受験シーズン真っただ中の季節にSNSで偏差値について厳しい発言をした。

 私立大学の明治、青山学院、立教、中央、法政の頭文字から受験業界が「MARCH」とひとくくりにすることを「軽薄な風潮」と断じ、「この国を停滞させていると確信している」と厳しく批判したのである。

 発言の真意を説明すべく、例を挙げた。

「科学でも芸術でもスポーツでも何か一つのことを上手にやるのはとても難しい。たまに会う、松任谷由実さん。彼女は15歳のときからあれだけの楽曲を作っていたんです。天才ですよ」

サッカーの元日本代表にリフティングを何回できるかを尋ねてしまい、あとから赤面したことがあります。

僕なんかはリフティングを1回、2回と数えるのですが、彼らにはリフティングを数える発想なんてなかった。実力のスケールが違うわけです。そういう人たちが世の中を切り開いていく」

誰にでもバカの壁がある

「夏目漱石(なつめそうせき)は希代の文豪ですが、絵が好きだった。漱石が本当にやりたかったのは絵ではなかったかと思うくらい。

でも漱石にも養老孟司(たけし)先生がおっしゃった『バカの壁』があったようで、絵を上手に描くことはできなかった。誰にでもバカの壁はある」

 絵や音楽やスポーツだけではない。「あなたの種目」はたくさんある。

「養老孟司先生は僕に、茂木君みたいな変わった人もいていいのが日本という国なんだよ、と言ってくれました。だから日本にはとても感謝しています。でも、養老先生が言うには、僕のような人間は主流にはなれないそうです(笑)」

 そしてMARCHの話に戻る。

「受験勉強なんて、たったの5科目とかですよ。その程度のものに偏差値とかMARCHとか言って、実にくだらない」

 東大生がクイズ選手権にのめり込む姿にも違和感を覚えるという。

「そんなことで楽しんでいても仕方ないのではないか、と思ってしまう。

僕は『成績がいいから褒められる』ってことに興味がなかった。小学5年生からアインシュタインって言っているわけだから。子ども心に、将来は世界に出て英語でやるしかないと思っていました」

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