「勉強では苦労しなかったけど、人間関係では苦労した。『普通の人』が苦手で」(撮影/小山幸佑)

 茂木さんは高校生の頃、高いIQ(intelligence quotient=知能指数)を持っていることが入会条件とされるメンサの試験をパスしたほどの頭脳の持ち主である。

「テストで苦労するって感覚はなかったんですが、人間関係では苦労しましたよ。友達は普通に欲しいけど、そもそも『普通の人』苦手だったし」

 思春期の小さな苦労である。中学時代の成績は学年1位だった。

やんちゃな人が好き

「友達は少なかったですが、教室の隅っこで何かを模索しているような子とは仲良くなれました。教室の真ん中でワーッと盛り上がっているグループは無理でした。

優等生のことを嫌いなはずの、ヤンキーとか不良とか呼ばれている人たちとも相性がよかったです。

『茂木がやるんだったら』と、こっそりタバコを吸っているかもしれない不良の友達と一緒に朝のランニングをしたり。隅っこにいるタイプ、っていうところが似ているんでしょうね。

市川團十郎(だんじゅうろう)さんに時々会うと楽しいし。團十郎さんが不良ってわけじゃないですが、やんちゃな人、好きですね」

 茂木さんは2021年4月、屋久島おおぞら高等学校(通信制)の校長に就任した。自分のペースで卒業を目指せる学校だ。自宅でも最寄りの連携施設でも学べる。

「勉強ができる子が偉いんだという価値観が一切ない高校です。これまで学校に行くのが大変だった生徒も自由に学んでいますよ。楽しく校長をやらせてもらっています」

 少数派の居心地の悪さを体験して育った茂木さん以上の校長適任者は、そう簡単には見つからない。

AIは最大公約数

 茂木さんはAIをどう見ているのだろう。

「生成AIの誕生でコモディティ的な、つまり置き換え可能な仕事はなくなることが確定したようなものです。

今のところ、生成AIが生み出す文章やイラストは、すでに流通しているものを統計的に分析して最大公約数を出しているだけ。

ピカソやモネ、手塚治虫みたいな『最大公約数から外れたもの』を現在のAIは学習できません。これからは、最大公約数から外れた部分だけが価値を持つ時代に突入します」

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