ウィリアム皇太子とキャサリン妃(写真:AP/アフロ)

 しかし想定と違い、ダイアナさんには「強さ」があった。結婚式では、伝統の誓いの言葉「(夫に)従います」を省略。初めての外遊の際は、王室のルールを破り生後9カ月のウィリアム王子(当時)を連れていった。それ以降も公務に幼い子どもを帯同。これらは、ウィリアム王子と結婚したキャサリン妃に受け継がれた。

 ダイアナさんの行動は、「王室を変える」という強い意志より、結婚前から続くチャールズ皇太子とカミラ夫人の関係への反発から、という説もある。チャールズ皇太子とカミラ夫人の不倫は続き、最終的にダイアナさんとの離婚、そして事故死という悲劇を招いた。この時のエリザベス女王の対応に国民の王室への非難は高まり、その後も支持率が急落。チャールズ皇太子への風当たりが強まった。

「この一件で、王室の基準で相手を選び恋愛結婚のように体裁を整えてもうまくいかない、と反省したのでしょう。名門貴族出身ではないキャサリンさんを『ウィリアム王子が選んだ人なら』と受け入れた。結果的に、王室の伝統を尊重してくれるキャサリン妃は大当たりでした」(多賀さん)

結婚も多様性の時代

 一方、ヘンリー王子の妻メーガンさんは、離婚歴があり年上、黒人系で両親が離婚している。かつて王室の結婚の障害となったものが多様性の進む時代のなか、どんどん認められていくようになった。今後は同性婚もありうる。ウィリアム王子は2019年、長男のジョージ王子がLGBTQでも「全く問題ない」と発言。なおオランダでは2021年、王や女王も同性と結婚できると首相が言明している。

「王室は究極のセレブであると同時に、親しみやすい人間味と憧れの的としての理想的な人間像の体現を求められます。エリザベス女王、ダイアナ元妃、キャサリン妃、メーガンさんの四つの結婚のあり方を見ると、変化の激しさを実感します。個人の自由・個性尊重、価値観の多様化などが進む社会と、英国王室は今後もしたたかに折り合いをつけ、生き抜いていくでしょう」(多賀さん)

(ライター・羽根田真智)

AERA 2024年5月27日号より抜粋

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