AERA 2024年5月27日号より

結婚」について、アエラが行った読者アンケートでは様々な声が寄せられた。「結婚」という形を取らず、別居の男性パートナーとの間で小学生の子どもを育てているという50代の女性の意見はこうだ。

「結婚をすれば医療面や住宅ローン優遇など、メリットはあるでしょう。でもたとえば同性カップルに対して『結婚制度に乗るか、乗らないか』で差別すること自体がおかしいのではと私は感じます。人と人のパートナーシップは、十人十色。結婚という枠組みありきの発想ではなく、『あるべき形』のない自由な形が理想だと思います」

「結婚」以外の関係も

 人と人がパートナーとしてつながろうとするとき、はたして従来の固定観念のままの「結婚」がベストな道なのか。「結婚」以外のパートナーシップで生きていく。そんなことも可能ではないか。慶應義塾大学准教授(家族社会学)の阪井裕一郎さんは「いまの日本では理想論ですが」と前置きしたうえでこう話す。

「人とのつながり、パートナー関係に関して、もっと『グラデーションのある制度設計』のようなものがあった方がいいのでは、と思います。たとえばフランスのパクスは恋愛関係、性的な関係の二人に限定されるものではなく、友だち同士で使うこともできるし、セクシュアルマイノリティーの中でもアセクシュアルやアロマンティックなど、他人に性的感情や恋愛感情を持たない人たちが助け合って生きていきたいと思ったときにも使うことができる。でもいまの日本ではそれができません」

 近い将来、日本の男性の約3分の1、女性の約4分の1が生涯結婚しない、あるいはできなくなると推計される日本。そんな状況はもはや個人の問題ではなく、結婚という社会制度がそろそろ時代に合わなくなってきていると考えるべきだと阪井さんは言う。

「社会的に孤立する人も多く存在するなかで、現状の結婚という法律しか助け合う仕組みがない。そんな状況って、どう考えても問題でしょう。複数の選択肢がある、グラデーショナルなパートナーシップのあり方。それを模索すべき時に来ていると、私は思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年5月27日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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