今後30年以内に70%の確率で首都圏を襲うとされる首都直下地震。対策として重要とされる、「事前復興」とは何か。AERA 2024年5月20日号より。
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首都直下地震の発生が懸念されるなか注目されているのが、「事前復興」と呼ばれる取り組みだ。
「訓練を契機に参加者同士が顔見知りになることで、普段の街づくり活動や地域コミュニティーづくりに繋がることもあり、災害時のスムーズな地域協働復興の実現が期待できます」
東京都葛飾区。都市計画課の担当者は言う。
東京の東端に位置する葛飾区は江戸川、荒川といった大河に囲まれ、中央に中川など大小6河川に囲まれている。軟弱な土砂からなる地層(沖積層)が厚く堆積し、区の半分以上が東京湾の満潮時の平均海面より低い「ゼロメートル地帯」となっている。しかも、区の南西部は、震災時に延焼被害の恐れのある老朽木造住宅が密集する木造住宅密集地域がいまだ多く残る。住宅が密集して道路が狭く、緩衝地帯となる公園などが少ないことから、火災による被害も多くなると想定されている。そこで04年から、「事前復興」の取り組みを進めている。
専門家の協力を受けながら地区ごとの復興マニュアルを作成したり、参加者が被災者になりきり地区において重要となる課題や復興の方針などについて区の職員とともにグループワークで話し合ったり。こうした取り組みをこれまで区内10地区で行い、約350人が参加した。
「住民の方々が協力し合い、普段からのコミュニティーづくりが大事だということに、皆さん改めて気付いていただけているようです」(同課担当者)
事前復興を提唱する、東京都立大学の中林一樹(いつき)名誉教授(都市防災・災害復興学)はこう話す。
「『泥縄』という言葉がありますが、事が起きてから慌てて対策を取っても間に合いません。地震からの復興も同じです」
中林名誉教授は、阪神・淡路大震災を教訓に事前復興の必要性を説いてきた。
阪神・淡路大震災では11万棟以上の建物が全壊全焼し、地震の2日後には復興に動いた。だが、当時、東京で直下型震災が起きるとその4倍の43万棟が全壊焼失するとの想定をしていた。未曽有の災害に対し、「迅速に復興するには事前に復興対策を準備する必要がある」と東京都に提言した。