人類の目は、長い時間をかけて環境に適応し、進化を遂げてきました。生物の変化はそう簡単には進むものではありませんし、何千年単位、何万年単位といった気の遠くなるような歳月が必要となります。一方で、スマホが世の中に登場してからまだ20年も経っていません。私たちの目がスマホを見るのに適したつくりにはなっていないのは言うまでもないことです。
それにもかかわらず、20センチほど先の小さな画面に、しかも長時間ピントを合わせ続ける人がなんと多いことか。
この目にとってストレスフルな状況になんとか適応しようともがいた結果、誕生するのが「スマホアイ」です。この言葉は私が定義した言葉で、要するに近くの狭い範囲を見ることに慣れた「スマホ用の目」のことで、具体的には次のような特徴があります。
そしてスマホアイには、それによって引き起こされるさまざまな症状があります。
●調節緊張/調整麻痺(スマホ老眼)
●急性内斜視
●近視の進行
●眼精疲労(疲れ、かすみ、充血、頭痛、肩こりなど)
●ドライアイ
さらに、睡眠不足や自律神経失調、スマホ依存など間接的に与える影響まで含めると、もっと広範囲に及びます。
スマホアイから守りたいのは子どもたちの目と脳
とても素敵な風景に出逢うと、スマホやデジカメで写真を撮っておきたくなります。でも、さぞきれいな写真が撮れただろうなとワクワクしながら見てみると、「あれ? なんか違う」とがっかりしてしまうことがありませんか?
これは、私たちが目で直接見て認識しているものは、脳で複雑に処理された映像だからです。ものを見るという行為は、目だけでは完結しません。脳も関係しているのです。両目で捉えた大量の情報が脳へと送られて初めて、人は目に見えているものを認識できます。私たちは目ではなく、脳でものを見ているのです。