そのためには、目が受け取った大量の情報を脳が的確に処理する必要があります。この能力は、生まれながらに身についているものではありません。生まれてから10年ほどの間に、さまざまな経験を積むことで培われます。
そんな大事な時期にスマホばかり使っていると、ものを見る能力を十分に獲得できないばかりか、脳にもマイナスの影響を与え、子どもの健やかな成長に待ったをかける恐れさえあります。では、次からは「スマホアイ」が子どもたちに、実際どのような影響を与えているのかを見ていくことにしましょう。
歩きスマホで人にぶつかりそうになる本当の理由とは?
駅や街中で「歩きスマホ」をしている人をよく見かけます。みなさんも、よくないとわかっていながら、仕事でどうしても見なければいけないなど、ついやってしまうことがありますよね。なかには、スマホでメールやニュースを読みながら歩いていると、突然目の前に人が現れてうっかりぶつかりそうになる……そんな経験がある人もいるのではないでしょうか。
このとき、あなたの目のピントはスマホの小さな画面に合っています。すると周囲が視界に入っていても、実は認識されていないことがあります。単に注意が散漫になるだけでなく、視界に入っても認識できない、つまり周囲が〝見えていない〟状態になるのです。
このような視野の狭窄(きょう さく)は「スマホ視野」ともいわれ、愛知工科大学の小塚一宏名誉教授によれば「画面を凝視している状態では視野の95%が失われる」という実験結果もあるそうです。
そもそも、ものが「見える」のは、目に映ったものを脳が認識しているからです。ところが視界の中心にある対象物だけを凝視していると、脳は「周りは見なくていいや」と判断します。周辺視野の視細胞は機能していて、脳へ刺激が伝わっているにもかかわらず、認識しなくなるのです。