AERA 2024年5月13日号より

「何でもかんでもハラスメントと言い出すと、ものすごく窮屈で生きづらい社会になる。過剰反応も昨今とても多い」(大阪府・50代・メーカー社員)、「セクハラなどは特に人によるところもあるし、以前ならコミュニケーションの一部として済まされてきたものも多いと思う。どこが境界線かは難しい」(東京都・40代女性・派遣社員)、「悪意がなくとも相手の受け取り方によってハラスメントになり得るのが恐ろしい」(愛知県・50代・保育士)といった具合だ。

 キャリアに関する調査機関「Job総研」が20~50代を対象に2月に実施した「ハラスメントの境界線」に関する意識調査では、ハラスメントが増加する時代との向き合い方について、「時代に合わせる」との回答が8割強。ハラスメントの増加に対しては「生きにくい」との回答が7割近くを占めた。職場でのハラスメントに「敏感になっている」と回答した人は8割を超え、年代別では40代が87.1%で最多だった。ハラスメントの意識が高まる風潮について、「気にしすぎだと思う」と回答したのは56.8%。これも40代が最多で63.4%だった。ハラスメントに敏感な半面、「気にしすぎ」だとも感じている人が40代に多いのは、上司にも部下にも気をつかう立場ゆえだろうか。

AERA 2024年5月13日号より

「逆パワハラ」も増加

 ハラスメント意識の高まりとともに、立場の弱い側から強い側に対して行われる「逆パワハラ」も増えているという。ハラスメント対策のコンサル会社「クオレ・シー・キューブ」のチーフコンサルタントで福利厚生管理士の岩井真理さんは言う。

「上司や先輩から指導を受ける立場の社員が、自分の間違いを認められずに、『自分が失敗した原因は管理職や先輩が注意喚起してくれなかったからだ』と捉えてしまったり、挑戦を促された時に『やりたくないことを強制的にやらされている』と訴えてしまったり。客観的に正当な指導であっても『パワハラを受けた』と訴え、人間関係がこじれるケースもみられます」

 逆パワハラを含め、職場でのハラスメントを防ぐにはどうすればいいのか。岩井さんはこうアドバイスする。

「指導行為とハラスメントの境界について職場で率直に話し合う環境が必要だと感じています。特に営業部門は『お客さま』の意向や『売り上げ』が優先され、それがルール化されやすい傾向にあります。これを防ぐためにも、あらかじめ経営方針の中でハラスメントに関する規定を明文化した上で、社員の教育研修を継続実施することをおすすめします」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2024年5月13日号より抜粋

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