“音楽経験0”からスタートし、わずか3年でブレイクというエピソードからはつい“天才”という言葉が浮かんでくるが、imase自身は「楽器ができるわけでもないですし、特別な才能があるとは思っていないです」と語る。それではなぜ、彼の楽曲はこれほど多くの音楽ファンを惹きつけているのか。ひとつめのポイントは情報収集とインプットだ。
「今流行っている曲を日々チェックしたり、インプットは欠かさないようにしています。また、タイアップ曲の場合は、自分のルーツにはないジャンルの曲も取り入れていますね。たとえば『Happy Order?』(マクドナルドタイアップソング)の場合は、SMAPさんや嵐さんなど、2000年代のアイドルソングを参考にしていました。“矢島美容室”さん(とんねるず、DJ OZMAによるユニット)のちゃめっ気がある歌詞も参考にしていましたね」
「歌詞はサクッと」納期を見据えて効率よくつくることも大切
さらに、できるだけ効率よく、スピード感を持って制作することも意識しているという。
「特にタイアップの場合は納期もあるので、効率はかなり大事ですね。具体的に言うと、ジャンル感や楽曲の雰囲気につながるビートのテイストは早めに決めて、そこにギターやキーボードなどでコードを乗せて。いちばん時間をかけるのはサビのメロディー。鼻歌を歌いながら何パターンも作って、できるだけキャッチ―なものを選ぶようにしています。歌詞もわりとサクッと書いていますね。自分の経験というよりも作家的に書くことが多いし、歌詞よりも音を作るほうが好きなので」
ファルセットを効果的に使ったボーカルもの音楽の特徴。そこには「心地よく聴かせたい」という意図があるようだ。
「洋楽っぽいサウンドの曲が多いので、それに合うように日本語の発音を崩すようにしていて。〈どうでもいいような 夜だけど〉(『NIGHT DANCER』)の歌い方もそうなんですが、母音を柔らかく歌うようにしていますね。それは桑田佳祐さん、松任谷由実さん、オリジナル・ラヴの田島貴男さんなどもやられてきたことだと思いますし、日本語のポップスにおけるスタンダードな歌い方なのかもしれないなと」