唯一の懸念は「認知症」

  ただ、神吉さんはそのリスクにも懐疑的だ。見守りサービスの利用や、清掃費をカバーしてくれる保険が販売されており、事前に取れる対策はある。

  そもそも、高齢者は日中、家にいるため、大家や管理人は接点を持ちやすいというメリットがある。介護サービスを利用している人も多く、人との「つながり」によって、万が一の時にも早期発見につなげることができる。

 「高齢者だから発見が遅れる、というのは事実ではないと思います。ただ、人とのつながりがなく、介護サービスも受けずにずっと家にいる1人暮らしの高齢者は、発見が遅れるリスクがあります。自分は大丈夫だと思わず、介護サービスは積極的に受けてほしいです」

  入居者が亡くなった際には「残置物」の処分をどうするかという問題もある。だがこれも、処置の手続きや費用を保証してくれるサービスがある。残置物を円滑に処分できる「モデル契約条項」も国土交通省と法務省が示しており、備えさえしておけば大家の負担は少ない。

  神吉さんが唯一、強く懸念するのは入居者が認知症になった場合だ。「大家だけでは限界があります。地域包括支援センターと大家が協力して対策を取っていくことが重要で、その体制を充実させていく必要があると考えています」

  神吉さんが高齢者を受け入れるのは単なる「善意」ではない。利益もしっかり確保している。高齢者は次の物件探しが難しいため、長期の入居を望む。滞納や“夜逃げ”もなく、安定した賃貸経営につなげやすいのだという。

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大切なのは「下町的な人間関係」