大家との関係性が「見守り」につながる

  安定的な経営のためには、高齢者との関係づくりも重要になる。神吉さんは管理している物件に出向き、入居者たちとの交流に努めている。旅先で大量に土産を買ってみんなに配ったり、世間話をしたり、その関係性が「見守り」につながる。

  さらに、高齢者たちの社会参加や生きがいづくりにも取り組んでいる。物件の近所の清掃活動をはじめ、特定の入居者に、ごみ集積場で分別をチェックする役割を任せたりもしている。いずれもボランティアではなく、働いてもらっただけの賃金をちゃんと支払う形だ。役割があることで、高齢者が生き生きすることを実感している。

 「現代における、下町的な人間関係をつくっていきたいと思っています」

  さまざまな人間が暮らす集合住宅。問題が発生することもある。

  それでも、神吉さんはこう思いを語る。

 「認知症を除けば、高齢ゆえのリスクは少ないと感じています。人間、誰もが年を取りますよね。勝手なイメージを作って、それを理由に高齢者の排除を続けるのは良いことではないと思います」

  親や自分が老いて一人になったとき、賃貸に移り住むという選択肢があった方が、暮らしやすい老後につながることは間違いないだろう。

(國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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