日本での活動休止後は渡米し、南カリフォルニア大学とバークリー音楽院で音楽を学んでいたアンジェラ・アキさん

LAでは100%学生の生活

 名門・南カリフォルニア大学に入学した理由は、アラニス・モリセットのプロデューサーとして知られるグレン・バラードの勧めだったとか。家族でLAに移住し、子育てをしながら「100%学生」の生活を送ったという。

「子どもが小さかったので、デイサービスを利用して、大学に通って。授業が終わったら子どもをピックアップして、家に帰ったらまた勉強という生活でしたね。大変だったけど、大人になってから勉強し直すのはすごく意味のあることだと思いました。自分自身が興味を持っていることを学ぶわけだから、苦でもなんでもないんですよ。ただ学費がすごく高かったので、少しでも元を取ろうと思って(笑)、クラスの最前列で質問しまくってました」

 2年間のカリキュラムを終えたあとは、バークリー音楽院のオンライン講座を受講。音楽の勉強を継続しながら、少しずつミュージカルに関わる仕事をスタートさせた。特筆すべきはディズニーの短編ミュージカル作品「アウト・オブ・シャドウランド」。ミュージカル「ファン・ホーム」でトニー賞を受賞した作曲家ジェニーン・テソーリの楽曲に作詞家として参加したのだ。

「ジェニーンは現代のブロードウェイ・ミュージカル界のなかでも3本の指に入る作曲家。この業界で『ジェニーンと仕事をした』と言えば誰もが驚くし、『自分が進んできた方向は間違ってなかった』と思える奇跡のような出来事でした。ジェニーンとは今も関係が続いていて、新作のオープニングパーティに招待してくれることもあって。ブロードウェイのミュージカルがどのように成り立っているかを間近で見ることができたのもすごく良い経験となりました。日本に比べたら、ミュージカルの世界で仕事をしている女性の数も多いんですよ。もちろん女性の立場を勝ち取ってきたムーブメントの成果だし、それは今も続いていますね」

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「この世界の片隅に」で活動再開