前述した通り、シンガー・ソングライターとしてのキャリアを中断し、ミュージカル音楽家になる勉強のために渡米したアンジェラさん。それは彼女自身が思い描く音楽人生を送るために必要な行動だったのだが、この10数年の時間は彼女の価値観や人生観にも大きな影響を与えた。その変化は歌の表現にも表れているようだ。

「私はデビュー前の下積みが10年あって、メジャーデビュー後もがむしゃらに歌い続けていたんです。“こうあるべき”と自分で設定した目標に向かって走り続けて、それを達成するために曲を作って、ライブをやって……。“ハーフは売れない”“28歳のデビューは遅すぎる”みたいなことも言われたし、“そんなことはない”と必死にもがいていたんです。でも、今の私にはもう何かを証明する必要がなくて。肩の力も抜けているし、“この瞬間を楽しもう”と思えるようになったんですよね」

 歌うことを楽しめるようになったというアンジェラさん。YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で代表曲「手紙~拝啓 十五の君へ~」を歌唱したときも、自らの変化を実感したという。

「カメラの前で歌うなんて本当に久しぶりだったし、紅白のときよりも緊張したけど、そのなかでも楽しめている自分がいて。動画を見てくれた人から“歌い方が変わったよね”と言われるんですけど、もしそうだとしたら、歌うことを楽しめるようになったことが大きいんじゃないかな。『手紙』が今もたくさんの人に聴いてもらえていることを実感できたのも嬉しかったです」

「手紙~拝啓 十五の君へ~」は、“拝啓 この手紙読んでいるあなたは どこで何をしているのだろう”という歌詞ではじまる。1番が“15歳の自分から大人の自分に宛てた手紙”、2番は“大人になった自分が15歳のあなたに宛てた手紙”という形式で構成されたこの曲は、今も多くの人々の心の拠り所になっている。

「THE FIRST TAKEで『手紙~』を披露した後、たくさんの人がコメントを書いてくれて。『10代のときは本当につらくて、生きてるだけで精一杯だったけど、今は子供が二人いて笑顔で過ごしています。あの頃の自分に“大人になったら、生きててよかったと思えるよ”と言ってあげたい』みたいなコメントがすごく多かったんですよ。それを読んでいるときに『私もそうだ』と思ったんですよね。メジャーデビューしたばかりの自分、『手紙~』を書いたときの自分に『よくがんばったね』って言ってあげたいし、抱きしめてあげたいなって」

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