一方でシングル男性と女性の比較では、意外(!)な結果が出ていました。長期的なデータを見ると、シングル女性のほうが男性シングルより劣る傾向にあったのです。この現象の背景には、実は男女間の賃金格差が大きく影響しています。賃金格差から、頭金の額や投資原資に影響を及ぼし、結果として女性が不動産の購入や交渉において不利な立場に立たされやすいことが影響しているようです。さらに、女性は男性に比べて交渉を好まない傾向があるという点も、不動産購入の成果に差が出る一因とも考えられています。

 これらの洞察は、不動産購入を検討しているすべての人々、特にシングル層やファミリー層にとって重要な示唆を与えています。シングルの投資家は、不動産企業の比較や積極的な交渉が必須でしょう。ファミリー層は、不動産市場よりも家族のニーズを優先することが多いため、マイホームは資産だと思い詰めすぎず、平均的には損しやすいものと思い、だからこそ慎重に分析し、資金計画に余裕を持たせるということが重要かもしれません。無理して予算オーバーすることのツケが回らないように……。

 もちろん、最終的に、不動産購入は個人の状況、市場のタイミング、経済環境といった多くの要因に依存します。しかし、この複雑な決定を下す際には、自身の属性と市場状況を十分に考慮し、賢明な判断を下すことが重要です。

 私もこの研究結果を念頭に置きつつ、自分に言い聞かせたいところです(汗)。

*1 PAUL GOLDSMITH-PINKHAM and KELLY SHUE、“The Gender Gap in Housing Returns、”THE JOURNAL OF FINANCE•VOL. 78, NO. 2•APRIL 2023

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