撮影/JMPA

 というのも眞子さん佳子さまの例にならうなら、<質問→回答>は大学卒業が最後なのだ。天皇陛下秋篠宮さまは、誕生日に会見を開く。皇后雅子さまの誕生日は「ご感想」だが、紀子さまは質問に文書で答える。だけど眞子さんと佳子さまの誕生日には、側近が「近頃はこんなふうにお見受けします」と記者会に説明するだけ。そして結婚の日には<質問→回答>になるのが通例だが、いろいろありすぎた眞子さんは文書を読んだだけだった。

 つまり愛子さまとの<質問→回答>は結婚を別とすれば、これがラストチャンスなのだ。それなのに、たった1問って……とごちゃごちゃ書いたが、記者会が自発的に「1問」としたとは思っていない。宮内庁との事前の打ち合わせの結果、「1問」になった。たぶんそれが正解だろう。

 というのも1問だが、それにしてはこまごま聞いている。「大学卒業を迎える現在の心境」について問うのだが、「大学生活で印象に残った出来事」「友人との思い出」「卒業論文の内容や苦労した点」と具体的にあげて回答への補助線を引いていた。「将来的な希望」にも話を広げ、「海外留学、大学院進学」についても尋ねていた。1問という制約の中で、できるだけ具体的に答えてもらいたい、話を広げたい。そういう記者の思いが感じられる構成だ。

 さて、愛子さまの回答だが、冒頭は能登半島地震についてだった。亡くなった人、被災者を思い、復旧・復興を願う文章で、このことを報じるメディアも多かった。そこから卒業にあたっての心境になるが、まずは感謝の気持ちからだった。先生、職員、大学関係者、友人、最後に天皇皇后両陛下。その順番で「心からの感謝」を述べた。

 その上で、コロナ禍のオンライン授業からキャンパスに足を運べるようになるという「転換期」を経験したと4年間を振り返り、当たり前だったことがいかに尊いことだったか実感したと表現した。卒論は「式子内親王とその和歌の研究」で、「特に締め切りが近づいた昨年末は、気が遠くなるような毎日を過ごしておりました」と明かした。提出し、「ほっとした気持ちと同時に大きな達成感がありました」とし、指導教官らへの感謝を述べた。

 留学など「将来の勉学」については具体的には考えてないとし、4月から日本赤十字社に非常勤職員として勤めることに触れ、「少しでも社会のお役に立てるよう、公務と仕事の両立に努めていきたいと思っております」で締める。そういう回答だった。

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「こういう人」の腹落ちがない