二十歳になったときの記者会見同様、よく練られた上々の文章だった。気配りができて、とても賢い女性だということがわかり、成長するさまも伝わってきた。だけど、どうもすっきりしない。愛子さまの良いところしか見えてこないというか、それで全然よいのだけれど、でも本音が見えないというか、愛子さまってこういう人なのかという腹落ち感がないのだ。

 同じく「天皇家の長女」だった黒田清子さんは、どうだったのだろう。そう思ってあれこれ探したら、TBS NEWS DIGの「皇室アーカイブ」に学習院大学を卒業した清子さんの記者会見の映像(1992年)があった。紙を手元に置くことなく、質問者の方を見て、ゆっくりと丁寧に答える清子さんの映像を見ると、愛子さまの20歳の会見が思い出される。が、記者の質問は愛子さまへのそれよりもずっと幅広い。

 1問目は「大学生活を終えるに当たっての心境」、2問目は「卒業後の進路」に加え「成年皇族として皇室のあるべき姿、自分の役割」を聞き、3問目は「心動かされる男性と巡り合ったことはあるか」に加え、「理想の男性像、結婚観」も尋ねている。3問目は令和の今だから「不適切」案件かもしれない。だが清子さんはユーモアを交え、巧みに答える。2問目では両親(現在の上皇さまと上皇后さま)の日々の様子を語った上で、「常に心を寄せ続けるという姿勢が、皇室のありようの根本にあるのではないかと感じました」と述べていた。映像はここまでだが、『紀宮さま御歌とお言葉集 ひと日を重ねて』を読むと、眞子さんが生まれて「叔母になっての感想」や「理想の女性像」なども聞かれていることがわかる。

「結婚の時期、理想の男性像」に加え、「お相手はいらっしゃいますか」と聞かれたのは佳子さまだ。「相手がいるかについてですが、このような事柄に関する質問は、今後も含めお答えするつもりはございません」が回答だった。清子さんはもちろん、眞子さんと比べても、このきっぱりとした答えは新鮮でカッコよかった。今、佳子さまがジェンダー平等に関わる公務をたくさんしているのを見るにつけ、「ああ、あの時の佳子さまは、ここに来たのか」と思うのだ。

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自らの足で歩く愛子さまへ