だから愛子さまに「理想の男性像」や「お相手」を聞いてほしいと言っているのでは全くない。だけど、何と言うか、宮内庁も宮内記者会も、結果的に愛子さまを「超・箱入り娘」にしてはいないだろうか、と思うのだ。

 現在の皇室は、大変さまざまな問題を抱えている。次代を担う男性皇族悠仁さましかいないというのは、喫緊の課題だろう。大学卒業時、眞子さんには「女性宮家の創設」、佳子さまには「皇族の減少など皇室の課題」について尋ねる質問があった。どちらも「制度についてのことなので控える」という回答だったし、愛子さまに聞いたとて同じ回答になることはわかっている。が、わかっているということと、最初から聞かないということは違うのではないか。元新聞記者として、そんなふうに思う。

 愛子さまの卒業を伝えるWEB女性自身の記事が、「すごく素敵で気品あふれる女性になられましたね」「尊すぎて涙が出てくる」など「ネットやSNSの反応」を紹介していた。愛子さまが「超・箱入り娘」であることが、今の皇室と国民をつないでいる。そのことを宮内庁も宮内記者会もよくわかっている。だから、あれこれ聞いてそれ以上の愛子さま像になるより、「1問」で国民の期待する像を伝えられればよい。そんな気持ちになったのではないか。そんな想像もしている。だけど、そういうつながり方でいいのかな、皇室と国民は、とも思う。

 4月から愛子さまは働き始める。仕事をするとは、自らの足で歩くことだ。「超・箱入り娘」からの脱却を、愛子さまが望む。そんな日が来るかもしれないと、少しだけ期待している。(コラムニスト 矢部万紀子

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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