学校や仕事、生活での悩みや疑問。廣津留さんならどう考える?(撮影/吉松伸太郎)

小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(30)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA dot.連載。今回は、子どもが海外大学への進学を目指しているという40代女性からの留学費用に関する相談に答えてくれた。

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Q. どちらかと言えば低所得家庭で現在、3人の子どもを育てています。次女は中学受験をし、海外大学への進学を目指して寮生活中です。ただ、海外大学への進学を真剣に考えれば考えるほど、費用面は現実的には甘くないことが分かってきました。奨学金なども探していますが、廣津留さんが留学していた当時、まわりの留学生の経済状況や費用面ではどんなサポートがあったかを教えてください。

A. ハーバード大は寄付金の規模が大きく、学生に対する経済面のサポートがかなり手厚かったですね。半数以上の学生が何かしらのファイナンシャル・エイド(奨学金制度)を利用しているそうです。奨学金の金額は成績に関わらず家庭の経済状況により異なり、親の年収の何%と決まっていました。私自身も援助を受けていましたし、奨学金で学費が全額免除となっている学生も、私のまわりだけでも数人はいました。返済は不要です。授業料だけでなく寮費や食費、年1回の帰国費用などもサポートしてくれる場合もありました。また奨学金制度の中には、「ワークスタディ」という条件もありました。これは、例えばアドミッション・オフィスでの作業や図書館の受付など、学業と両立しながらこなせるような学内でのアルバイトのことで、仕事で得た報酬を差し引いたうえで、足りない金額を大学側が負担するシステムになっていました。

 また、それとは別に例えば海外でインターンシップや研究をするときなどにも補助金を申請することができました。自分の熱意をしっかり文面にしてプレゼンする必要がありますが、それが通れば渡航費や食費などインターンシップに必要な経費を大学から出してもらえるんです。私の場合は学生オーケストラに所属しており、条件を満たしていたのでバイオリンのメンテナンス料まで補助金を頂きました。学生の「やりたい」という意欲や熱意を費用面でも万全にサポートしてくれる体制が整っていたことに驚きました。たしかにハーバード大学は寄付金の規模が大きい学校ではありますが、アメリカでも大学によって制度はさまざまです。日本ではまだあまり知られていなくても、現地で評判のいい大学はたくさんあります。ぜひいろいろな大学の奨学金制度を調べてみて、広い視野で進学先を検討することが大事だと思います。

 日本でも最近は、グルー・バンクロフト基金や孫正義育英財団、柳井正財団など、さまざまな奨学金制度が増えています。うまく情報収集をして留学に活用するのもいいかもしれません。

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廣津留すみれ

廣津留すみれ

ひろつる・すみれ/バイオリニスト、国際教養大学特任准教授・成蹊大学客員准教授。1993年、大分市生まれ。2016年にハーバード大学(学士課程)、2018年にジュリアード音楽院(修士課程)を卒業。世界的チェリスト、ヨーヨー・マとの共演のほか、ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズの演奏・録音などを担当。情報番組にコメンテーターとして出演も。著書に『ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の「超・独学術」』(KADOKAWA)など。2022年にファーストCD「メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲+シャコンヌ」をリリース。ジュリアード音楽院の教授ジョセフ・リン氏の代演を務めたコンサートのライブ音源を収録している。

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