結局、宇宙は有限か無限か
今から138億年前に発した光を含む平面はいわば「現在の我々が観測できる宇宙の限界」に対応する。この考察を全天に広げれば、この限界は我々を中心とする半径138億光年の球面となる。
しかしながらこれは宇宙に果てがあり、有限のサイズを持っていることは意味しない。それどころか宇宙には果てがなく無限の体積を持つと考えられている。
にもかかわらず、一般解説書には、宇宙の大きさは3000メガパーセクだとか、宇宙は光が138億年の間に到達できる半径を持つ、とか書かれていることが多い。
「宇宙は有限なのか、無限なのか、はっきりしろ」と怒りを覚える方がいらっしゃるのも当然である。
この混乱の元凶は、「我々が現在観測できる宇宙」と「観測できるかどうかに関係なくその外に広がっている宇宙」という二つの異なる概念を明確に区別せずに説明しているためだ。その違いはとても大切であるにもかかわらず、説明し始めるとそれだけで講演会が終わってしまうほど時間がかかる可能性がある。
そのため、「くどくなくわかりやすい」説明を心がける大多数の専門家は、暗黙のうちに「我々が現在観測できる宇宙」という意味で単に「宇宙」という単語を用いている。このような専門家の善意が、宇宙ファンの多くの方々を混乱させているようだ。
そこでとりあえず、ある講演会のあとで寄せられた質問「宇宙の大きさはどの位ですか」に対する、私のくどくてわかりにくいものの実直な回答を紹介しておこう。
現在の標準的宇宙論では、宇宙は無限に広がっており果てもないと解釈されています。その意味において、宇宙の大きさは無限大です。ただし、天文学者が単純に「宇宙」と呼ぶ場合、それは「我々が現在(原理的に)観測できる領域の宇宙」(地平線球)をさすことがほとんどです。