「例えば、精神疾患の親を子どもがケアしていて子どもが生きづらい状況にある場合は、早期に気づいて支援に繋げる仕組みをつくることです。そのためには、保育士や学校の教師が子どもの日々の困難さに気づき、適切な配慮と必要な支援へとつなげていくことが重要。家庭以外に信頼でき、助けてくれる大人が存在するか否かは、子どものその後の人生を左右する大きなポイントとなります」

 そんな中、予防的支援の一つとして注目されているのが、家庭訪問型支援の「ホームスタート」だ。

週1回2時間の訪問で、子育て家庭の孤立感を解消

 埼玉県和光市。3歳7カ月の息子がいる母親(33)と、ホームビジターの西尾順子さん(50)が楽しそうに会話する。

「息子が癇癪を起こして、ものすごいんです」

「大変だったね」

「そうなんです! 大変なんです!!」

 女性は5年前、和光市に移り住み結婚した。近くに友人はおらず、実家は遠方で頼れる人もいない。夫は平日、仕事で家にいないので、一人で悩みを抱えた。

 特に息子は癇癪がひどく、女性は疲弊し、産後うつのようになった。そんな時、助産師に教えてもらったのが、和光市を拠点に活動する「ホームスタート・わこう」だった。藁にもすがる思いで、電話した。

 ホームスタートは1973年、イギリスで始まった。6歳以下の子育て家庭を、子育て経験があり研修を受けた「ホームビジター」と呼ばれるボランティアが週1回2時間、継続して2~3カ月程度訪れ支援する。利用は無料で、世界22カ国で活動する。国内では2006年からNPO「ホームスタート・ジャパン」が活動の普及を開始し、今では全国32都道府県、112市区町村にまで広がっている。

 先の女性は、息子が1歳7カ月の時から断続的に利用している。

 約2時間。ホームビジターと話をするのは、息子のこと、子育ての苦労、夫のグチ……。時には病院にも一緒についてきてもらい、女性が診察中は息子の様子をみてもらう。息子もホームビジターにすぐ懐いた。

 昨年9月から女性のホームビジターになった西尾さんは、3人の子育て経験者。女性の話を聞きながら、自身も子育てにもがいていた話を伝えることも少なくない。

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