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 精子凍結をする男性が増えている。一方で、男性たちの精子の質が世界的に落ちているという。精子凍結はリスクヘッジになるのか。

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「少しでも若いときの自分の遺伝子を残しておきたかった」

 2023年、人気韓国人歌手で俳優のジェジュン(37)が、韓国のテレビ番組(「花婿修業」)で精子凍結していることを明かし、話題になった。ジェジュンが精子を保存しているクリニックは、保管期限が最長で5年、今年で3年目だという。番組でジェジュンは、「恋愛、結婚は難しい。本当に難しい」と語り、「僕はまだ“(結婚の)準備ができていない人”だと感じている」とも明かした。

上昇する生涯未婚率

 恋愛、結婚は難しい――そう感じている若い世代は、現代の日本にも多い。生涯未婚率が年々上昇し、50歳で一度も結婚したことがない男性は28.3%(2020年、国勢調査)。つまり、50歳の3〜4人に1人は結婚歴がないことになる。また、20〜40代の未婚の男女を対象に恋愛や結婚について調査した結果(21年、リクルートブライダル総研)によれば、恋人がいない人の割合は66.6%と、恋愛離れの動きも顕著だ。調査結果によれば、女性より男性のほうが恋人がいる人の割合が低く、これまでに交際経験がない人の割合が高い。

 実際、精子凍結をする人の中には、「パートナーがおらず、いつできるかもわからない」「結婚の予定は全くないが、もし将来そうなったときのために」という人も一定数いるという。精子凍結の保管期限は学会の規定により、「生殖年齢まで」と定められており、不妊治療を専門とするはらメディカルクリニックでは「65歳の誕生日まで」としている。卵子凍結の場合、多くのクリニックが45〜50歳までとしているのに比べると、長期間の保存が可能だ。

 保管料はクリニックによって異なるものの、一般的には容器1本ごとに年間1万2千円前後がかかる。仮に30歳で精子凍結し、65歳まで35年間保管し続けた場合、42万円がかかる計算になる。卵子凍結と比べると、費用面は抑えられるが、保存した精子を使うとき=パートナーと不妊治療を開始するとき。人工授精や体外受精、顕微授精で凍結精子を使うことになる。パートナー不在で凍結に踏み切る場合、実際に使うことがいつになるか、先が読めないという場合も少なくない。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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