新法では、「売春を行うおそれのある女子」を要保護女子とした婦人保護事業も盛り込まれるが、「性風俗業に従事する人への差別を助長させるのでは」と懸念するのが、前出の要さんだ。
要さんは、新法によって、性風俗業界で働く人への風当たりが強くなり、法規制が強化されるなど、職を失う人が増えることを心配している。なぜなら日本国内で職を失うことで、海外に出稼ぎに行く流れが加速する可能性が拭えないためだ。
「実際に、AV業界ではすでに、懸念している現象が起こり始めています」(要さん)
書面での出演契約から1カ月間の撮影禁止や、全ての撮影終了後4カ月間の公表禁止、公表後1年間(施行後2年間は経過措置として2年間)は無条件で全ての出演契約を解除可能であることなどを定めた「AV新法」の影響もあり、今後AV女優の仕事はコロナ禍以上に減ると見られている。一方、日本のAV作品は世界的にも人気で、たとえ国内で稼げなくなってきていたり、また有名でなくても、「日本のセクシー女優」の肩書きがあれば、売買春の需要は跳ね上がる傾向がある。
2023年9月、香港で逮捕された売春グループの中に日本人女性が4人おり、うち1人がAV女優だったと現地メディアで報道された。日本国籍の女性の1回の料金は6千~7千香港ドル(約11万~13万円〈1香港ドル=18円換算〉)だったという。同グループは外国の女性たちや未成年の少女を香港に連れてきて売春させた疑いがあり、匿名性の高い通信アプリを通じて、「時給2千~2500香港ドル」と称して女性を集めていた。逮捕されたAV女優は、26歳と偽って売春をしていたが、実際は39歳だったという。