性風俗産業全体を通して、雇用関係がないにもかかわらず、実態としては従業員並みの規則や枠組みが設けられているケースも少なくない。実際、出稼ぎをする女性たちの中には、「決められた枠内で、決められたサービスを、決められた価格で提供する日本の風俗店に嫌気がさした」という人や、「海外のほうが嫌なことは嫌と言えるし、自由に働かせてくれる」という人もいた。歌舞伎町など歓楽街の研究を続ける武岡暢准教授(立命館大学)はいう。
「女性たちは個人事業主で、店は場所を貸しているだけといったとしても、それはあくまで表向きの建前。店と女性との間に雇用関係がなくても、実際は就業に関する厳しい規則があったり、出勤についての細かい指示があったりと、結局は女性に裁量がそこまでないというケースは多く見られます。セックスワーカーの全体像をつかむのは難しいものの、働き方の実態は、ほとんど従業員というケースも少なくないのでは」
AV業界の先例
2022年、警視庁では、生活に困窮した女性が都内の繁華街で売春を行うケースが増えたことなどを受け、検挙された女性を対象に自治体の相談窓口に同行するなどの支援を専門に行う担当者の配置を始めた。またDV(家庭内暴力)や性被害、貧困などさまざまな困難を抱える女性への支援を強化する新法「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が成立し、2024年4月から施行される動きもある。