例えば、「あなたの体を流れているのは、日本じゃなくてラテンのリズム」とか「短調の曲をこんな死にそうに弾く人ははじめて」とか……。貶されているようなんだけど、これが確かに私の演奏にぴったりな表現なのがまたおかしくて。いつかエッセイにしたいと思っていたので、今回書き下ろしとして入れられてよかったです。
――厳しいけれど愛のある先生だというのが、エッセイから伝わってきました。
はい。タイトルだけ聞くと「なんじゃそれ」と思われるかもしれませんが、初めてバズった時に書いた家庭科の先生を始めとした、良い先生シリーズの仲間入りになるような話になっています。
あとは、すでに発表しているエピソードでも書き足した部分ですかね。書籍化作業の中で、編集や校正の方からいただいたご指摘で表現を変えたり、バッサリ切って丸々書き直したところがあるのですが、そうしたエッセイは印象に残っています。
noteで発表したエッセイと書籍に載っているものと、書いてあるトピックスとしては一緒なんですが、温度感や濃さ、密度的な意味では書籍の方がかなり濃厚になっていると思います。
>>後編「ネットで大反響呼んだエッセイストが初の書籍化作業の裏側を告白!?『メロスだからOK』という編集者から校正者への指摘とは」につづく
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ひろみちお兄さんとの感動の再会から、義父のメダカの水槽に尻を突っ込んだハプニングまで、潮井さんは日常のちょっとした出来事をみずみずしく切り取りエッセイにしたためる。楽しいことばかりが起こるわけではない日々に、ささやかな面白さを見出し続けるこの視線は、現代を生きる多くの人にヒントを与えそうだ。
(取材・文=大谷奈央)