※写真はイメージです(Getty Images)

 1970年代までの日本人の離婚は「10組に1組」の割合でレアケースだったが、1990年代になると「3組に1組」となり、周囲でも離婚する人が多く見られるようになった。“離婚した人には問題がある”とされていた時代から“いろいろ事情もある”と周囲がくんでくれる時代になっている。社会学者で家族社会学を専門としてきた、中央大学文学部教授の山田昌弘氏の新著『パラサイト難婚社会』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、「未婚・離婚」の現代の日本社会における位置付けについて紹介する。

【表】未婚率は年々上昇している

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結婚マイノリティがマジョリティへ

「未婚」も「離婚」も、現代日本では少数派ではなくなりました。世の中のマイノリティが世間からその存在を認識され、一定の立場を獲得するには、それなりの段階を経る必要があります。つまりマイノリティもあまりに少数である時代は、その存在すら人々には認知されず黙殺されてしまうわけです。その状況を脱して、多数派にたとえ数では負けていても、「我、ここにあり!」と自らの存在を主張するためには、総数と声の大きさが必要です。

 この現象を「女性管理職比率と同じ」だと、私は常日頃から学生に説明しています。ジェンダー論の授業では、「女性比率を○%と論じること自体が、ナンセンスではないか」という声が、学生から挙がることもあります。何でも数字で測るというのは杓子定規ではないか、という疑問です。

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山田昌弘

山田昌弘

山田昌弘(やまだ・まさひろ) 1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。主な著書に、『近代家族のゆくえ』『家族のリストラクチュアリング』(ともに新曜社)、『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『新平等社会』『ここがおかしい日本の社会保障』(ともに文藝春秋)、『迷走する家族』(有斐閣)、『家族ペット』(文春文庫)、『少子社会日本』(岩波書店)、『「家族」難民』『底辺への競争』(朝日新聞出版)などがある。

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