「未婚」「離婚」「同性婚」なども同じではないでしょうか。それらが社会全体の1割に満たない時代は、何をしても「これだから未婚は」だの「やはり離婚したから」だの「あそこは同性カップルだから」と、何かと「属性」の問題にされてしまう。その観点から眺めてみると、「未婚・離婚」がタブー視されずに一般的になったのは、いったいいつからなのでしょう。

 私が見るところ、「離婚」が決してレアなケースではなくなってきたのは80年代以降、そして「未婚」は2000年以降からです。

 1970年代までの日本人の離婚は「10組に1組」ペースでした。10組に1組では、現在の女性管理職比率と一緒です。要するにレアケース。離婚した人に何か問題があるのでは、と思われてしまいます。「私、離婚しようかな」とか「俺、離婚したんだよね」と世間で大っぴらに話せない時代でした。

 しかし90年代になると、周囲でも「離婚した友人」「離婚した上司や同僚」「離婚した親族」が見られるようになります。こうなると離婚したからといって、白眼視されることはまずありません。「離婚」が本人の不徳の致すところではなく、「いろいろ事情もあるよね」と周囲もくんでくれるようになる。ましてや現在の「3組に1組」の離婚状況では、もはや「私、離婚しようかな」という相談は、「私、結婚しようかな」と同じくらいの感覚で受け止められます。もはや芸能人が離婚しようが、近所の知り合いが離婚しようが、世間はそれほど騒ぎません。むしろ自分自身の中でも、頭の片隅に常に「離婚」の二文字がちらついている……という人も少なくないはずです。

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山田昌弘

山田昌弘

山田昌弘(やまだ・まさひろ) 1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。主な著書に、『近代家族のゆくえ』『家族のリストラクチュアリング』(ともに新曜社)、『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『新平等社会』『ここがおかしい日本の社会保障』(ともに文藝春秋)、『迷走する家族』(有斐閣)、『家族ペット』(文春文庫)、『少子社会日本』(岩波書店)、『「家族」難民』『底辺への競争』(朝日新聞出版)などがある。

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