AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。35人目は、徳田拳士四段です。AERA 2024年3月4日号に掲載したインタビューのテーマは「将棋以外の楽しみ」。
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「皆さん、はじめまして。小林健二九段門下の徳田拳士です。山口県の顔と言われております。長所はそこそこ、顔がいいところです。よろしくお願いします」
2022年4月に四段に昇段した徳田は、棋士総会でそう自己紹介した。当然のように大受けし、徳田は棋士人生の冒頭から伝説を作った。
「最前列が重鎮の先生方なんですよね。だからすごいテンパっちゃって。とっさに出た言葉があれだったんですけど。それで、ずっとイジられることになってしまいました」
ABEMAトーナメントの撮影でスタッフから再現を求められた際、徳田はそう苦笑した。徳田は山口県周南市で生まれ育った。近代将棋史上では初の、同県出身棋士だ。顔は涼やかで、発言も面白い。そしてデビュー1年目から異例の好成績をあげた。山口県のファンにとって、徳田は郷土の誇りともいえる存在だ。
「四段になって、地元の方々には大変喜んでいただけました。山口は、自然がいっぱいあるのがいいですね。疲れたときとか、帰ってゆっくりしたくなります」
徳田の趣味は釣りだ。
「実家が瀬戸内海のすぐ近くなので、そちらで釣ることが多いです。日本海側は実家から遠いので、なかなか出向けていません。釣りは父につれていってもらっていました。父はスキーやスノボなど外で活発に動くタイプで。やりたいという遊びはだいたいやらせてもらいました」
「拳士」という名は漫画「北斗の拳」の主人公・ケンシロウにちなんで、父がつけた。
「ちょうど世代なんですね」
徳田は小さな頃、柔道をやっていた。
「幼少期はすごい泣き虫で、いつもくよくよしてたらしいので、父親が心配して、強い子になってほしいと思ったのでしょう。たまたま近くにスポーツ少年団があって、やってみないかと」