AERA 2024年2月26日号より
AERA 2024年2月26日号より
AERA 2024年2月26日号より

「観光にも生かせる鉄道だったので、廃線になる前に何とかできなかったのかな、と思います」

 ただ、「鉄道がなくなると地方が衰退する」というだけで、苦境を乗り越えられるわけではない。交通手段としてだけなら、バスで十分という面もある。

「オプション価値」

 島根県立大学准教授で、ローカルジャーナリストとして『ローカル鉄道という希望』の著書もある田中輝美さんは、「大切なのは、一地域の問題に矮小化しないこと」だと強調する。一地域の問題と捉えると本質を見失いがちになる、と。

「鉄道の価値の一つはネットワークです。地域と地域、人と人が繋がれば、新しい出会いや交流の可能性が広がります。繋がりの可能性を狭める社会が本当に幸せなのか、そうした視点から見ていくことも必要です」

 そのためにも、社会を支えるインフラとして鉄道を位置づけることが重要と田中さん。

「例えばインフラと認識されている道路について、赤字だからなくしてもいいという議論はあまり聞かれません。鉄道も同じです。ただ、日本は主に都市の鉄道事業者の成功体験があるために、鉄道に採算性を求める風潮が強すぎると感じます」

 鉄道の価値は採算面だけでは測れない。いつでも誰でも乗れ、高齢になった時も使える。こうした選択肢がある状態を「オプション価値」と言い、鉄道の場合は特に強い。しかも脱炭素社会に向け、CO2(二酸化炭素)の排出量が少ない鉄道が果たすべき役割は大きい。

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年2月26日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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