ローカル線を取り巻く環境は、厳しさを増している。存続が危ぶまれる区間はどこか。鉄路が寸断されるとどうなるか。AERA 2024年2月26日号より。
【図表】崖っぷち!乗客が少ない鉄道ワースト50はこちら(全5枚)
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千葉県の房総半島のまん中を走るJR久留里線(木更津-上総亀山)。2月上旬の平日の午後、終着の上総亀山駅(同県君津市)で2両編成の列車を降りた乗客は、5人しかいなかった。駅近くに住む70代の女性は、千葉市内の病院に行くのに、週に1度は列車を利用している。
「久留里線は大事な足。なくなったら、困っちゃうわよ」
昨年3月、里山を走るこの鉄道に衝撃が走った。
運営するJR東日本が、久留里線32.2キロのうち、末端部の久留里(同)-上総亀山間9.6キロについて、バス路線への転換も視野に存廃協議に入ると、千葉県と君津市に申し入れをしたと発表したのだ。JR東が事実上の存廃協議を申し入れたのは、災害で長期不通となった路線を除き初めて。JR東は、「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていない状況にある」と説明した。
揺れる地方の鉄路
JR東に限った話ではない。地方の鉄路が存廃に揺れている。
国土交通省は昨年8月、赤字が続くローカル線の経営改善や存続などを議論する「再構築協議会」を設置する際の基準を示す基本方針を決定。1キロ当たりの1日平均利用者数を表す「輸送密度」が「1千人未満」の線区を優先すると記した。
1千人未満の線区は、いったいどれくらいあるのか。非公表のJR東海を除く、JRグループ5社がホームページなどで公表しているデータなどで調べると、全国に90区間。そこから災害で運休している路線を除いたワースト50を一覧にした。
最も崖っぷちにあるのは、広島・岡山両県を走るJR西日本・芸備線の東城(広島県庄原市)-備後落合(同)の25.8キロ区間で、輸送密度は20人(2022年度)。冒頭の久留里線の久留里-上総亀山間は、輸送密度は54人(同)とワーストスリー。21年度の運賃収入はわずか100万円で、3億円近い赤字。営業費用に対する運輸収入を示す収支率は0.5%で、JR東全体でも最低水準にある。