矢萩邦彦さん(撮影/馬場岳人)
矢萩邦彦さん(撮影/馬場岳人)

低学年のときの偏差値は全く当てにならない

矢萩 低学年のときの偏差値が4年、5年になっても通用するかというと、これはもう、全く当てにならないんですよね。だから、「うちの子はできる」と思っていたんだけど、いつの間にか全然できなくなってしまった、みたいなケースもありますし、逆に全然できないと思っていたら、精神年齢が上がったり、夢ができたりすると、突然できるようになることも少なくありません。

安浪 そもそも最難関校の合格実績をウリにしている進学塾は、シンプルに「偏差値で学校を選ぶ」ということですからね。つまり、最難関、難関を目指すためのテキストになっている。低学年から通っていても、それに乗れなくなってしまう子が出てくるのは当然です。あと低学年から通うことのデメリットとしては、通塾が惰性になってしまうこともありますね。親も塾に任せっきりになってしまって、わが子の現状が見えなくなってしまうことも多いです。

矢萩 これは僕自身の考えですが、中学受験のコンテンツって「2年」だと思っているんです。5年、6年生の丸2年間しっかり勉強すれば大体合格できると思っていて。それで入れないんだったら、多分学校選びに無理があるんですよ。例えば、3、4年生からめちゃくちゃ詰めて頑張って、ギリギリ合格できた学校に入学したとします。その場合、中学入学後、果たしてうまくやっていけるかというと、ちょっと不安があります。今までの教え子たちを見ていると、ある程度、余裕を持って学校生活が送れるぐらいのバランスがいいんじゃないか、という体感があるんですね。

安浪 わかります。ただ、中学受験で勉強する範囲が年々増え、難度も上がってきているので、大手進学塾で最難関、難関を目指す場合は4年生から、っていう言い方になるのでしょうね。

矢萩 5年生からのほうが息切れしにくいですよね。途中で疲れちゃったり、6年生の夏前後に、「受験やめたい」と言い出したり、受験はすると言っているのにサボるようになっちゃうとか、そういうケースって、3、4年生からはじめている場合が多いと思います。まあ、性格や性質、家庭環境にもよりますが。

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