「僕」こと渡辺正樹は27歳。特許事務所で働く弁理士だが、恋人に捨てられ、他の女性にも相手にされず、「掃き溜めのような人生」をおくっていた。ところが!
 藤沢数希『ぼくは愛を証明しようと思う。』は、そんなモテない青年が「恋愛工学」のテクノロジーの修行を続けることでモテモテの男に大変身するまでを描いた小説、というか小説仕立ての恋愛マニュアルだ。
 彼に「恋愛工学」を伝授したのは永沢圭一。〈いいか、わたなべ。恋愛というのは運とスキルのゲームなんだよ。頭を使って戦略的にプレイしないとダメなんだ〉。そう豪語する永沢が渡辺に命じた最初のミッションは50人の女性にアタックすること。〈1年に50人もですか?〉とひるむ渡辺に永沢はいった。〈いいや。1日に50人だよ〉
「恋愛工学」といえば聞こえはいいが、要は新手のナンパ(スケコマシといいますか)術。とはいえ昔の「ホットドッグ・プレス」に載ってたような牧歌的なナンパ術ではない。そこはルーティーン(女性に話しかけたり会話をはずませるために使う台本)、オープナー(道を尋ねる、写真を撮ってあげるなど、初対面の女性に声をかける方法)、タイムコンストレイントメソッド(説明略)、スタティスティカル・アービトラージ戦略(説明略)、セックストライorストップロス戦略(説明略)などの専門用語が飛び交う100%テクノロジーの世界であった。〈恋愛も、勉強する者だけが救われるのだ〉
 街コンからはじめた渡辺は、徐々にスキルアップし、1年後には永沢とこんな会話をかわすまでになる。〈「この東京の街は、僕たちのでっかいソープランドみたいなもんですね」/「ああ、無料のな」〉
 ったくもう。こんな軽佻浮薄な男には天罰が下ってしまえ!という読者の心情を見透かしたように、終盤、渡辺にはほんとに天罰が下るのだが。要するに「やりたい」だけじゃん。なんだけど「やる」ための惜しみない情熱と努力には脱帽する。

週刊朝日 2015年9月11日号