隠「昔は旧暦だから、2月4日だったんだろ。十日後がバレンタインだよ。『ちょっと早いけどバレンタインだチュー』って渡したんだろな」

八「はぁ……出鱈目でしょ。それ」

隠「出鱈目? あー、そうかもしれないな。しかし、それを証明出来るのか? この説が完全な出鱈目と証明出来るならしてもらおうか? ネットで調べたことが正解か? そんなことはないなんてことはお前も知ってるだろう? お前は俺を頼って聞きに来たんだ。鵜呑みにしろとは言わないが、嘘か真かなんかは自分で判断して、その説を楽しんだらどーだ? ……ていうか、お前は正解を求めているのか? 干支なんてものにハナから真実求めてんのか? バカなのか!? そもそも龍なんか空想上の生き物だろが!!」

八「……まぁそうですけど、あのなんでバレンタインデーはチョコレートなのかは教えてくれないんですか?」

隠「ジョニー・バレンタイン、知ってるか?」

八「……昔のレスラー!」

隠「おぉ、それだけ知ってりゃ十分だ。アントニオ猪木が東京プロレスを旗揚げしたときに自らの対戦相手として招聘した外国人レスラーだな。『金髪の妖鬼』との異名を持つ実力派だ」

八「はぁ」

隠「ジョニー・バレンタインの好物、知ってるか?」

八「……まさか」

隠「そのまさかだよ。ジョニー・バレンタインはチョコレートが大好物だったんだ。それを猪木は知っていてギャラと一緒にチョコレートを大量に贈ったんだな。ジョニー・バレンタインはそれをたいそう喜んだ。で、バレンタインデーにはジョニー・バレンタインの好物に因んでチョコを贈るようになった。参ったか」

八「……それも出鱈目でしょ?」

隠「だ・か・ら! 嘘かもしれないが、嘘ならなんなんだよ!? 猪木がチョコレートを買い込んで、ヤマトの便でジョニー・バレンタインに贈るんだぞ! 考えただけでも、楽しいじゃないか! マーブルチョコとか、チョコベビーとか、ビックリマンとか……」

八「時代考証……」

隠「必要か? そんな小さなこと」

八「だって……」

隠「越えて行けよ、時代なんか……」

八「は?」

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