講書始の儀で講義を受ける愛子さま=2024年1月11日、皇居・宮殿「松の間」

愛子さまの目を通して雅子さまが感じた

 では、陛下が譲った「平和」で、雅子さまはどのような和歌を詠んだのか。

 雅子さまは、愛子さまが中学3年生の修学旅行で広島市の原爆ドームなどを初めて訪れ、平和への願いを卒業文集に書いたときのことを和歌にした。
 

 広島をはじめて訪(と)ひて平和への深き念(おも)ひを吾子(あこ)は綴れり
 

「いいお歌です。陛下が喜んで譲ってくださったのは、陛下も皇后さまのこの御歌を残したいと思われたのでしょう」

 と永田さん。
 

 平和というテーマは、「平和は大切だから守らねば」「『平和を祈る」といった観念でとらえがちだ。しかし、雅子さまの和歌は、実際に広島に足を運んだ愛子さまが肌で感じ、深く考えたという具体的な描写が入ることで、説得力と厚みのある内容になったと話す。

 普通ならば、「思い」の文字を使うであろう表現に、「念(おも)ひ」の字を用いたことで、愛子さまの「深き念ひ」に重みが増したという。

「自身が見て感じた思いを、31文字に込めるのが和歌です。吾子(あこ)である愛子さまを通して詠んだこの一首は、雅子さまにしか詠めない和歌になったと思います」
 

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凝縮された言葉から伝わる人柄