北海道の厚岸町を訪問し、地元保育所の園児らに声をかける天皇陛下と雅子さま=2023年9月、北海道

天皇や皇后は「どのようなお人柄?」

 雅子さまは皇太子妃時代から、歌会始愛子さまの成長を詠んできた。皇室の和歌は、人びとのことを詠う公的な内容であるべきだ――そんな意見もあった。

 永田さんは、

「天皇や皇后という公としての立場は意識せざるを得ません」

 としながらも、両陛下や皇族方には、

「ときには立場を離れた和歌もお作りいただきたいと思います」

 と伝えているという。和歌を通じて伝わる「人間」としての天皇や皇后、皇族の姿があると考えるからだ。

「ひとりの人間としての感情や思いが伝わることで、初めて人は『皇室は、決して別世界の人々なのではなく、自分たちと同じことを感じ、考えているのだな』と共感し、親しみを感じるのではないでしょうか」
 

 私たちは、天皇や皇后という肩書と付き合うわけではないと、永田さんは言う。「徳仁天皇」がどのような人柄なのか、「雅子皇后」はどのようなことに関心を抱く人物なのか。それを知ることによって親しみの感情を抱くのだという。 

 31文字に凝縮された言葉で、自身のメッセージを伝えるのが和歌だ。そして歌会始の儀は、皇室と人びとが互いの思いを交わし、絆を結ぶ場でもある。

 令和皇室も6年目に入った。天皇陛下と皇后雅子さまの和歌を通じて、おふたりの人柄や心の内は多くの人びとに伝わっていくのだろう。

(AERA dot.編集部・永井貴子)