JR大曲駅のホームで、制服姿で秋田新幹線「こまち」の出発を見送る藤井。はにかみながらも、満足そうな笑顔を見せた=2023年12月6日

 前人未到の将棋の「八冠」を達成した藤井聡太。大の鉄道好きでも知られ、ゆく先々で鉄道を楽しみ、ファンにも公開。こうしたファンサービスには、将棋の普及と、地方鉄道の救世主の期待もかかる。AERA 2024年2月5日号より。

【写真】JR大曲駅構内で除雪車両を運転し、指さし確認をする藤井聡太八冠

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 藤井聡太八冠(21)が鉄道を楽しむ様子がメディアを通して紹介されることで、地方鉄道も盛り上がる。

 ことでん運輸サービス部係長の津田全史(まさし)さんは、

「体験の様子はSNSでも大きな反響があり、みんなの関心も高まって、明るい話題になりました」

 と言い、第三セクター「三陸鉄道(通称『三鉄』)」の広報担当、三河和貴子さんは、

「藤井さんのお陰で、三鉄のイメージアップになりました」

 と話す。

JR大曲駅構内で除雪車両を運転し、指さし確認をする藤井。「計器類に普通の電車と違うところがあり、すごく楽しい経験になりました」

地方鉄道の救世主に

 ライターで、本誌の連載「棋承転結」でもおなじみの松本博文さんは、藤井が鉄道の一日駅長や車掌体験をするのは、地元のことも考えてのことだという。

「ファンあっての将棋界ですので、地方のために何かしたいという気持ちは、多かれ少なかれ棋士はみんな持っていると思います」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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