性暴力の被害者が、周囲からさらに傷つけられる二次被害。被害者はつらい過去を告白したにもかかわらず、さらに心をえぐられることになる。

 昨年10月、故ジャニー喜多川氏の性加害問題で、元ジャニーズjr.の40代の男性が二次被害に苦しみ自ら命を絶った。また、お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志氏の性加害報道で、性被害を受けたと告発した女性に対し、SNSでは「告発はお金目的だろう」といった誹謗中傷が飛んでいる。

 性暴力の訴えは容易ではない。やむにやまれず行った叫びであり、告発だ。なぜそれを、誹謗中傷するのか。

 レイプクライシスセンター「TSUBOMI(つぼみ)」(東京都)代表で弁護士の望月晶子(あきこ)さんによると、性被害に遭った人はほとんど全員、家族や友人、被害を相談に行った警察、そしてSNSなど、至るところで二次被害を受けているという。

「二次被害となる誹謗中傷には、悪意に満ちたものから悪意のないものまであります。しかし、根本には、性被害に遭った人が悪い、被害者に落ち度があるという、被害者に対する無理解と偏見があります」(望月さん)

臭いものには蓋をする

 性被害への誤解や偏見は「強姦神話」と呼ばれる。

 お前に隙があったから、挑発的な格好をしていたから、お酒を飲んだあなたが悪い、男性は被害に遭わない……。

「悪いのは加害者で、性被害に遭うのは恥ずかしいことではありません。しかし、こうした強姦神話による思い込みや偏見が、被害者を傷つけることになります」(同)

 性被害当事者や支援者による一般社団法人「Spring」幹事の納田(のうだ)さおりさんは、強姦神話の背景には、長い期間、被害に遭うのは「家の恥」「本人の恥」とされてきた家制度の歴史もあると指摘する。

「その強姦神話によって生まれた、被害者が悪いという社会に脈々と根付いた倫理観が二次被害を招いています。また、臭いものには蓋をするという日本の文化もあいまって、加害者を皆で守り、被害者を責める状況を許してきました。その結果、性被害者はさらに声を上げづらくなり、性暴力の問題を埋もれさせることになってきたのです」

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