古賀茂明氏

 自民党は、1月25日に政治刷新本部の中間とりまとめを発表した。

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 今回の裏金問題の真相は不明なまま、派閥を「政策集団」と位置付けて、その存続を容認するという驚きの内容だった。

 小物議員の立件のみで幹部議員はお咎めなしという検察惨敗の結果に終わったことに続き、国民は大いに落胆、あるいは怒り心頭といったところだろう。

「岸田自民党」への信頼は地に堕ちた。

 しかし、岸田文雄首相は意気軒昂だそうだ。意外に思えるのだが、よく考えると、岸田首相としては、そんなに悲観する必要はないという見方も成り立つかもしれない。

 今回は、岸田首相が当面の危機を乗り切って、秋の自民党総裁選挙までに大逆転を狙うというシナリオについて考えてみたい。

 まず、岸田首相の突然の「岸田派解散宣言」の狙いは何だったのかを考えてみる。

 第1に、今回の検察捜査の幕引きで、国民の不満は安倍派とその幹部に集中することになった。巨額の裏金を作り、大半の議員がキックバックを受けていた。5人衆と言われる幹部は、検察の捜査まで受けたが、それでも逃げおおせたのだから国民の怒りは安倍派に向かうのは当然だ。その結果、元々安倍晋三元首相亡き後、代表さえ決められずバラバラになりかけていた安倍派は存続の危機に陥っていた。

 そこに岸田首相の突然の岸田派解散宣言だ。安倍派は当然解散せざるを得なくなる。その結果、岸田首相は、100人近くの党内最大派閥である安倍派という足枷から自由になる。これが最大の狙いだ。

 第2に、安倍派には、潜在的な総裁候補として、西村康稔前経済産業相、萩生田光一前党政調会長、さらには、世耕弘成党参院幹事長らがいるが、彼らを当面表舞台から排除するという狙いがあった。そのために、刷新本部の中間とりまとめには、「関係者による明確な説明責任に加え、あるべき政治責任についても結論を得る」という表現を盛り込み、25日には、党執行部が安倍派幹部に離党や議員辞職を要求したと報じられている。実際に離党するかどうかはわからないが、いずれにしても、彼らは表舞台での動きを完全に封じられることになった。岸田首相の完勝である。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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岸田首相の派閥解消作戦は、かなり高度な作戦だった