第3の狙いは、麻生派、茂木派の動きを封じることだ。派閥解消と言いながら、それに反対する麻生太郎氏には、決して麻生派を解散しろとは言っていない、政策集団として続けることは全く問題ない、事務所も閉めなくてよいなどと譲歩する姿勢を示しながら、一方で、派閥が政治資金パーティーを開くことを禁じ、さらには、「夏季及び冬季の所属議員への資金手当て等を廃止」と中間とりまとめに盛り込んだ。これにより、派閥に属する最大のメリットであるカネの分配がなくなり、派閥の領袖の求心力が大きく削がれることになる。一方で、岸田氏は、岸田派がなくなっても、党総裁として自民党の資金を支配するので、他の派閥に比べて圧倒的優位に立てるという計算だ。
第4に、麻生氏が派閥解消に反対したことで世論の批判を浴び、それによって、派閥解消を先に唱えた岸田首相が正義の味方に見える効果を狙った。これは、もう一方で、菅義偉前首相や石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相らの無派閥議員だけが光り輝くのを抑えることにもつながるため、一石二鳥の効果がある。
第5に、岸田派の会計責任者が訴追され、つい最近まで岸田派の会長だった岸田氏も安倍派幹部同様責任を問われるはずだったのに、派閥解消論がマスコミの関心をさらい、岸田氏の責任論は吹き飛ぶという効果もあった。
以上のように、岸田首相の派閥解消作戦は、かなり高度な「岸田氏一人だけ焼け太り作戦」だったとみることができる。
その作戦は今のところ岸田氏が狙った効果を発揮している。
しかし、だからと言って、岸田首相の支持率が上がるというわけではない。それについてはどう考えているのだろう。
岸田首相にとって、当面の課題は、4月の岸田おろしの嵐への対応だ。3月末の予算成立までは、自民党議員も表立った岸田おろしには出られないが、予算が通れば、すぐにその動きが出てくると言われる。石破氏などは、すでにそれを仄めかしてもいる。
だが、岸田おろしを実行するには、最終的に自民党総裁選の前倒しが必要だ。岸田氏は、何があっても、それには応じないだろう。各派閥が健在であれば、派閥の領袖が集まって、党内の大半の議員をまとめ上げて岸田氏に引導を渡すということもあり得ただろうが、今や、派閥にその力はない。