三上歌劇は終盤になるにつれますます熱を帯び、最後は絶叫し、倒れ込む。まさに圧巻の幕切れだった。
「俳優として、一人の虚像として生きてきた僕にとって空はどこまでも高く、広いと教えてくれたのは演劇だった」
終演後、三上の言葉をかみしめながら僕は誰もいなくなった舞台袖に足を運んだ。公演パンフレット冒頭に「テーブルの上の荒野をさむざむと見下すのみの劇の再会」と短歌が掲げられていたが、さしずめ三上にとっての荒野とは演劇そのものだったのかもしれない。
(文・延江 浩)
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