調査手法の違いも
メディアごとの数字の差には、この標本誤差に加えて調査手法の違いがある。例えば個別面接で行う時事通信の調査は電話より意思表明をためらう人が多く、支持率・不支持率とも低くなりやすいとされる。朝日新聞、読売新聞、日経新聞などでは電話でオペレーターが「あなたは岸田内閣を支持しますか」などと聞くが、曖昧な回答に対し、読売・日経は1度だけ重ね聞きする。重ね聞きしない朝日新聞より数字が大きくなりがちだ。毎日新聞は自動音声とショートメッセージを使って調査している。
「加えて、社ごとに『電話に出てもらえないとき何回かけ直すか』など細かい運用ルールがあり、結果に差が出ます。メディアは手法や運用ルールを変えずに調査を続けることが肝要ですし、私たちが調査結果を見るうえで大切なのは、一つの数字に注目するより、長期的に追ったり、各社を見比べたりして傾向をつかむことです」(渡邉教授)
12月の岸田内閣支持率は多くの調査で発足以来最低だった。読売新聞のみ11月から1%上昇したが、傾向として支持率はかなり下落していたとわかる。なお、本記事執筆の時点(1月18日)で24年1月の調査結果が出始めており、NHK、共同通信、時事通信でいずれも微増した。災害直後や正月をはさむ1月は支持率が上昇することが多いことを踏まえると、年明け以降、岸田内閣の支持もやや回復したと言えるかもしれない。
1千人の調査で1億人の動向をつかむ──。各社の威信をかけた世論調査を見比べれば、社会の“今”が見えてくる。(編集部・川口穣)
※AERA 2024年1月29日号