各メディアで調査し、報道される世論調査。SNSなどでは回答数の少なさや各メディアでの数字の差を指摘して信頼性を疑問視する向きもある。実際はどうなのか。識者に聞いた。AERA 2024年1月29日号より。
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パーティー券収入の還流と不記載問題は、下落基調だった岸田内閣の支持率をさらに押し下げた。朝日新聞が毎月実施する世論調査を見ると、2023年5月に46%あった支持率は12月に23%と半減。政権維持に黄信号がともるとされる30%を大きく下回った。
各メディアでは内閣支持率のほか、政党支持率や政策課題への賛否などを定期的に調査し、報道している。上智大学の渡邉久哲教授(社会調査論)は言う。
「世論調査は各メディアが独自に持つ『ものさし』で有権者の意識を測定した指標で、社会の関心ごとについて全体の意識の傾向を知ることができます」
ただ、SNSなどでは信頼性を疑問視する向きもある。そうした声として多いのが回答数の少なさと、各メディアの数字の差を指摘するものだ。
統計上の標本誤差とは
まず、回答数について。世論調査は多くの場合、有効回答数1千~2千程度。朝日新聞の23年12月調査では1136人で、1億人超の有権者数に対し「少なすぎる」との主張だ。
そして、同時期の調査でもメディアごとに数字が異なる。去年12月2~4週に行われた主要メディアによる調査で内閣支持率は、最も高い日本経済新聞と最も低い毎日新聞で10ポイント差があった。
渡邉教授はこう説明する。
「サンプル数が1千程度なのは、統計上それで信頼できる調査が可能と判断したから。メディアによって数字が異なるのは統計上の標本誤差に加え、手法に違いがあるからです」
世論調査はよく、「スープの味見」に例えられる。味を確かめるのに鍋の中身を飲み干す必要はなく、よく混ぜればスプーン一匙でいい。世論調査でも、詳しい計算は省くが、無作為に選んだ1千人に聞けば有権者全員に聞く場合との誤差がおおむね±3%以内に収まるとされる。これを標本誤差という。一般に3%以内なら信頼できる調査とされ、これ以上誤差を減らす場合サンプル数が膨大になる(例えば1%にするには約1万サンプル)ため、有効回答1千~2千程度で実施されることが多いのだ。一方、SNSのアンケートなどは対象が偏りがちで、有効回答数が多くても全体の傾向はつかみづらい。