ホフディランの小宮山雄飛さんがプロデュースした「究極 渋谷ブラックカレー」(手前)。福神漬と一緒に食べるのがおすすめだ(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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 近年レトルトカレーを食べる機会が増えていないだろうか。いまやレトルトカレーは簡単・便利なだけではなく、味が進化し種類も豊富になっている。その進化を2人の専門家が解説する。AERA 2024年1月29日号より。

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 東日本大震災やコロナ禍を経て、保存食・非常食としての存在が見直されたレトルトカレー。なかでも大きな変化は、高価格帯商品の人気と増加だ。

 これまで4千食以上のレトルトカレーを実食、自らカレーとスパイス料理の教室も運営するスパイス料理研究家、一条もんこさんはこう語る。

「家や地方でも手軽に美味しいもの、名店の味が楽しめる。これまで100円台で買える『ボンカレー』を筆頭に、100~300円台のものが主流だったところ、最近は500円超えのもの、中には1千円前後のものも人気だったりします。名店とコラボする商品も増えました。『あのお店のカレーがレトルトに!? すごい!』という時代から今では当たり前というか、その中でも再現度を問われる時代になりました。そういう高級志向は2024年にもっと強まる一方で、価格帯にかかわらず美味しくないと生き残れない時代に入ってくるのかなという気もします」

 家族で一緒に食べるときも、レトルトによって新たな楽しみ方が誕生している。

「家族で食べるカレーは、鍋でたくさん作ったものをみんなで食べるものでした。それが2017年にレトルトカレーの購入額とカレールーの購入額が逆転しましたが、これはルーの需要が減ったのではなく、レトルトの購入額が増えたということ。そのあたりからカレーの孤食化は一気に進みました。家族がそれぞれ好きなカレーを選んで、シェアしたり、最近の流行りのようなあいがけにしたり、新しい楽しみ方も出てきています」(一条さん)

 2024年、ますます進化するレトルトカレー界は、どういう方向に進みそうだろうか。一条さんと、芸能界屈指のカレーマニアで“音楽界のグルメ番長”、『旨い! 家(うち)カレー』(朝日新聞出版)などレシピ本も多数出版しているホフディランの小宮山雄飛さん、二人は同じようにスパイスカレーや各国のカレーが注目されたあとに「普通のカレー」、欧風や日本式のような、鍋で煮込む系のカレーが再注目されるのではないかとみている。

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