輪島市の避難所に増設された仮設トイレ(1月5日)

女性としての尊厳を守りたい

「ある避難所で、中学生の女の子たちが走るなどの激しい動きをなるべくしないように生活していたという報告を聞いたことがあります。その理由は『ブラジャーがないので胸の動きが目立ってしまうから』でした。体のフォルムが隠れるダボっとした服を着てやり過ごしていた彼女たちは、支援物資でユニクロのブラトップが届くと喜んで身につけて、今までどおり活発に動き回るようになったそうです」

 ほかにも、長い間髪を洗えず脂でベタベタになっているのが嫌で、みんなで冷たい川に入って洗ったといった体験談もあり、及川教授は「女性としての尊厳を守りたいという欲求はそれだけ切実だ」と話す。

 発災直後は、水や医療など命に直結する支援が最優先されるべきだろう。だが事態が徐々に落ち着くとともに、避難生活が長期化してくると、命の次は尊厳を考えるフェーズがやって来る。ナプキンすら用意のない避難所では、女性たちの“人間らしい生活”を守ることなど到底できない。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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