ソフトバンクドラフト1位で入団すると、1年目の19年から救援でフル稼働。一時は抑えを務めるなど65試合登板で2勝5敗26ホールド8セーブ、防御率4.14をマークし、日本一に貢献した。20年は右ひじ痛で1軍登板なしに終わり、手術を決断。故障の再発防止へ、右ひじに負担が掛からないコンパクトな投球フォームに改良したが、登板を重ねて直球の球威を取り戻した。

 昨年は状態が上がらず開幕2軍スタートだったが、5月に1軍に昇格すると安定した投球を続け、46試合登板で3勝1敗8ホールド2セーブ、防御率2.53をマーク。今季も「勝利の方程式」で期待がかかっていたが、西武への電撃移籍が決まった。

 西武から見れば、「最高の補強」と言ってよいだろう。昨年の救援防御率2.79はリーグトップだが、不安要素を抱えていた。

 救援の屋台骨を支えていた森脇亮介が昨年8月に都内の病院で「右上腕動脈閉塞(へいそく)症」に対する「上腕動脈パッチ形成術」を受けたため、育成契約でリハビリに専念。昨季21試合登板で防御率0.87と抜群の安定感を誇った佐々木健も昨年8月下旬に左ひじの手術を受けたため、育成契約でリハビリからの復活を目指している。

 抑えにも不安が残る。通算194セーブと抑えで活躍してきた増田達至だったが、昨季40試合登板で4勝4敗19セーブ6ホールド、防御率5.45と不安定な投球内容に。勝ちゲームを落とすとダメージが大きい。即戦力リリーバーの甲斐野が、守護神に抜擢(ばってき)される可能性は十分にあり得る。

 昨オフ、ソフトバンクから近藤健介の人的補償で日本ハムに移籍した田中正義は、47試合登板で2勝3敗25セーブ8ホールド、防御率3.50と覚醒。ソフトバンクでは伸び悩んでいたが、環境を変えて眠っていた能力が開花した。

 ソフトバンクを取材するスポーツ紙記者は、

「球の速さ、質、変化球の精度を比べると甲斐野の方が田中より上です。故障に気を付けて1年間投げればタイトルを獲得しても不思議ではない。西武にとって大きなプラスアルファになることは間違いない」

 と活躍に太鼓判を押す。

 過去にもFAで移籍した選手より、人的補償で環境を変えた選手が活躍したケースがあった。山川と甲斐野にはどのような野球人生が待ち受けているか。

(今川秀悟)