家族、コーチ、そしてファンへの感謝――。支えてくれた人たちへの思いが、とめどなく溢れた。
本田真凜(22)は1月11日、都内で記者会見を開き、競技からの引退を報告した。およそ25分間の質疑応答のなかで伝わってきたのは、周りの人々との心のつながりの強さ。彼女の魅力の源は、愛と友情の力から湧き出ていることを、改めて感じるひとときだった。
スケートは特別なもの
21年間の競技生活で、一番の思い出を問われると、迷わず、きょうだいの話を挙げた。
「私は2歳の時に、お兄ちゃんが先にフィギュアスケートをやっていたのをきっかけに始めて、きょうだい4人でスケートを一緒に切磋琢磨して頑張ってきました。ある京都の大会で4人で優勝できたことがあって、それがすごく、一番うれしかったことじゃないかなと思います」
数々の世界大会に出場してきた本田にとって、一番大切なのはきょうだい4人で過ごした時間。その言葉が、彼女のスケート人生をよく象徴していた。
3歳ずつ年の離れた兄・太一、妹・望結、紗来の4人は、いつもお互いを励まし合う仲。スケートに夢中になったきっかけも、家族への思いだったという。
「私は小さい時に、本当にたくさんの習い事をさせてもらっていました。アイスホッケー、体操、水泳、テニス、ピアノとか、フィギュアスケートはその中の一つでした。でも地元のスケートリンクが夏にプールに変わることや、(2005年に)醍醐(スケート)リンクが潰れてしまったのをきっかけに、(親に送迎してもらう)スケートだけが移動の距離が長くなりました。小さいながらに『頑張って送ってきてもらったからには、何か爪痕を残す練習をしないと』と思うようになっていきました。徐々に、きょうだいの中でスケートが『特別なもの』というふうに変わっていって、皆で頑張ってこれました」
親への感謝から練習を頑張るうちに、多くの公式戦へ出場する選手へと成長。
「たくさんの皆さんの前で、一人だけで演技できて見てもらえるというのが、自分のなかで特別なものに変わっていきました」