大学4年までやりきりたい
大学4年生での引退を決めたのも、兄・太一がきっかけだったという。
「大学4年のタイミングで競技の場から離れるということはずっと決めていました」
兄は大学4年のシーズン、自分にとってラストイヤーであることを公表して試合に臨んでいた。
「兄の太一が、引退の年、今の私と同じ年になったとき、最後の試合で最高の笑顔で、やりきった表情で終わっているのを見て、『私もここまでやりきりたいな』と思いました。それで、『大学4年まで、全日本選手権に絶対に出続けるんだ』というのをその時に決めていました」
そう語る、兄のラストシーズン。今でもよく覚えているのは、20年10月の近畿選手権と東京選手権だ。近畿選手権で太一は「僕が引退することで妹たちが崩れてしまうことなく頑張れるよう、今シーズンは集大成としてしっかりした姿を見せたい」と宣言。当時13歳だった紗来は、同大会で力を発揮できなかったものの、涙をぬぐい「自分で壁を破ります」と語った。その翌週の東京選手権では望結が「お姉ちゃん(真凜)の背中に少しでも近づきたい」と、好演技を見せた。
その時、真凜自身は、試合の2週間前に肩を脱臼し不安な状態。しかし演技直前に望結から「お姉ちゃんがこの衣装で滑る姿を早く見たいな」と声をかけられ、気持ちを切り替えた。本番は「紗来、太一、望結の頑張る姿に勇気をもらって頑張れました」と真凜。きょうだい愛のパワーを感じさせる一戦だった。
浅田真央からもメッセージ
4人で支え合ってきたきょうだいも、3年前に太一は社会人になり、妹たちは芸能活動にも力を入れるようになった。それでも真凜は、しっかりと兄の背中を思い出し、今季、大学4年生の全日本選手権へとたどり着いた。
「やはり全日本の舞台は自分の中でも特別で、ジュニアではじめて出場資格が満たされた年から9年間ずっと舞台にたどり着けていました。そこは自分を褒めてあげたい、誇らしく思えることです。たくさんのお客さんの前で演技できるあの舞台がすごく好きでした」
最後の演技後は、そっと右手で氷に触れた。
「これで最後なんだなと噛み締めた瞬間。すごく幸せな瞬間だったなと思います」