「なかなか寝つけない」「早朝に目が覚めてしまう」。年齢を重ねると、不眠に悩む人は増えていきます。では年齢を重ねた人にとっての「よい睡眠」とはどんな状態を指すのでしょうか。そこで60歳以上を対象に、おもな睡眠障害やその対処法について、専門の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「睡眠障害」全3回の3回目です。
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60歳以上の不眠の特徴について、日本ではまだ数少ない睡眠専門施設である昭和大学病院東病院睡眠医療センター長の安達太郎医師はこう説明します。
「加齢とともに睡眠やからだのリズムが変化し、活動量も減るため、からだが必要とする睡眠時間は減少していきます。昔と同じように長時間眠る必要がなくなるので、睡眠時間が短くなるのは自然なことです。多少の寝つきの悪さや早朝に目が覚めたりするのも年齢とともにある程度、避けられないこと。必ずしも不眠とはいえないのであまり悩みすぎる必要はありません」
必要な睡眠時間を年齢別でみると、15歳では約8時間ですが、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳以降は約6時間と、高齢になるほど短くなります。
安達医師によると、60歳以上の眠り方のこつは、「眠くないときはベッドに入らず、眠くなったらベッドに入ること」。
眠気を感じていないまま寝床に入ると、からだは眠る準備ができていないため、寝つきが悪くなります。途中で目が覚めたり(中途覚醒)、眠りが浅く感じたりするケースも、起きているのに寝床で横になっている時間(床上時間)が長いときほど生じやすいとされています。
「ベッドに入る時間に自然と眠くなるよう、夜には明るい光を避け、軽いストレッチやヨガ、歌詞のない音楽を小音量で流すなど、リラックスできる寝室環境を整え、睡眠に影響する生活習慣を見直す『睡眠衛生』の改善が大切です」(安達医師)